マトハヅレのせかい

−第二集−「世界はふたつ、不思議がひとつ」

  • かつてまだ人類が生まれていない時代、見渡すかぎりの遥かな大地には植物や巨大生物たちが共存をはかりながら暮らしていた。
  • 太陽と雨と肥沃な土地と食物連鎖によって、恒久的な生命サイクルが運行している。
    その光景はすべてが自然であり、すべてがいきものであり、すべてが本質であった。
  • ある日、天の先っぽがフッと閃いた直後、空に突入した彗星のひかりがはじけて大地に降りそそいだ。轟音とともにあたりは緋色に染まり、その火のなかから人類の祖先が生まれた。

マトハヅレのせかい-1

マトハヅレのせかい-1

  • 人間というものが存在しはじめた時から、世界のすべてはふたつにわかれた。自然界と人界、現実と虚構、白と黒、騒乱と静謐。
  • 人間はこの世に展開するものごとやできごと、果てはいのちの行方まで相対するふたつの事象のもとに分断して考えるようになる。自分たちが本来棲むべきところ、食べるべきものを忘れては夢と欲望のはざまで混迷する。森を伐り開き、川を汚し、娯楽として動物を狩るおそるべき時代が築かれた。
  • かつてひとつであった世界の本質は、人間にとって「不思議」として捉えられ、それは視界にも意図のなかにも決してあらわれない。テクノロジーで満たされた文明の裏側で、散り散りに砕けた太古の不思議が自分の片割れを探している。
  • その後も拡大する社会は大地を覆いつくし、彷徨いつづける不思議がもとの場所にもどる前にやがて世界は没落する。
  • 数千年の空白の時がめぐり、あらわれたせかいが今回の舞台である。ながい眠りから覚めた深い森がひっそりとたたずみ、風はそよぎ、川は流れ、季節の花が咲き誇る。
  • ゼンマイ仕掛けの動力をもつ機械と労働者が街のそこかしこで働き、貧しくも心豊かな生活のなか、皆汗だくになりながら手にしたパンが日々の糧となる。職人たちの仕事によってつくられた道具や衣装、装身具を代々受け継ぎながら大切に扱い、それらにもいのちが宿ると信じられている。
  • 生きること、死ぬこと、迷いのなかのひかり、揺れうごく生命、そして友愛。このせかいに繰り広げられるあまねく人生は歓喜と憂いの混沌だ。
  • 物質も動物も植物もすべて同じ魂の骨格を持ち、動物の頭に人間のからだという出で立ちの「けもの」と呼ばれるいきものが暮らす不思議なせかいのものがたり。
  • それでは、はじまりはじまり。

マトハヅレのせかい-3