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マトハヅレのこと

 

マトハヅレについて

 

マトハヅレは2013年に東京で設立された装身具の工房です。

意匠・設計・製作・販売を一貫したかたちでおこなっています。

 

私たちが日々のなかで模索すべきこと、または大事にしたい、と思っていることは、この現実世界と、もうひとつのせかい(つまりは人間の心象中に存在する幻想世界を指します)とを行き来するなかで、それらふたつの世界を表した装身具を、然るべき仕方でもって美しくつくること。

密やかに変転していく世界で、よく考へ、よく学び、よくサボり、よく転び、よく遊び、よく働くこと。

あたえられた有用な時間のなかで、笑いと涙をこころに据えて、進歩的な調和よりも質朴と混沌を愛し、おもしろい仕事をすること。

 

 「斯くあるべき」というたくさんの見えない的をかいくぐり、それを打ち抜かんとする爛熟の矢すらもかなぐり捨てたとき、雑木林の内奥からマトハヅレはやってくる。

この世に鎮座する決まりきったものごとに、とまどいと疑いを持ち、何か問えることはないか。

低い値打ちにとどまっている忘れられた意味や考えを見つけだし、高めるかあるいは深めることはできないか。

 

日常にどやされ、わからないことだらけの時代に右往左往し、考えたそばからすぐにさまざまなことを失念する私たちが、この事を心にとどめられるようにマトハヅレと名付けました。

 

 

 

 

ものづくりについて

 

ものづくりとは当然のことながら、世の中にものをひとつずつ生み、増やしていくことにほかなりません。

それならば作り手たる人々はやはりそのものたちの性質や行く末を、少なくとも想像し思い悩むことが求められるはずです。

 

あらゆる観点において、そのものにはどのような価値があるのか。

資本主義国家の営為がもたらす、貧ずる国々に巻き起こる悪事に与してないか。

わずかな時間でゴミへと変わってしまうものを生産していないか。

 

極まればものなど生み出すべきではないということになるけれど、私たちは作りつづけています。作りたい、表現したいから作っている。

 

だけどどれだけ思いをはせても、「これをやればこの世界のためになる」と言い切れる決定的な人間活動はなさそうです。

 

多くを消費することなく、小さくとも生きた価値を生み出す。

物質飽和時代の路頭に迷った現代人が、歩みをすすめるか、あるいは立ち戻るべき原点への手がかりはどこにあるのだろう。

 

かつて英国の詩人の言った「質素なる暮らし、高遠なる思索」を胸にマトハヅレのものづくりを考えます。

 

電気に代表されるエネルギーインフラに極力頼らず(現にマトハヅレでは仕上げや精密加工に使う回転工具を手作業に切り替えれば、例え停電になってもローソクの明かりのもとで装身具を作ることができます。)、物に触れることなく様々なモデル構築や編集ができるデジタルテクノロジーからそれなりの距離をとりつつ、汗まみれのポンコツが雨の日も、風の日も人力で足踏みふいごを吹き、糸鋸を動かし、トンカチを振るいます。

 

人間が生命を燃やして労するということが、クラフトマンシップの根源にあると信じている。

 

装身具にあっては、威厳に満ちているもの、意味もなく豪奢なもの、親しみの生まれないものは作りたくない。

人の心の奥深くにあるスピリットに語りかけるものを作りたい。

 

自然のなかから抽出されたマテリアルである金属は正しいかたちに修復し、磨きをかければあらゆる経年劣化を再生できます。

身体の変化に合わせて、サイズや造りをなぞらえることで愛する生物のように寄り添ってくれます。

使い古されてもよく手入れされたものは美しくかがやき、品格ある味わいを放ちつづけます。

 

私たちはものを無くすことはできないけどあまりたくさん持たずに、いくつかの気に入りのものを長く使いつづけることはきっと望ましいことなのだと思っています。

 

 

 

 

作品について

 

人間はきっとふたつの世界を行き来している。

 私たちが生きているこの世界には、数々の民族と社会があり、めぐりめぐっていく時代があり、人々のよろこびやかなしみが天体のごとくかがやいている。

 問うて問われる永遠の流転のなかで度し難く、私たちの目の前で展開されていくこの世界を、

「Q.」と呼ぶ。

 

 もうひとつの世界、それはひっそりとしずまる草のなかかも知れないし、はるか見果てぬ雲の上かも知れないし、誰も訪れたことのない町かも知れないし、あるいは望めど帰らぬ少年時代かも知れない。

 ある人々はそれを空想科学世界やファンタジーというかたちをとって色鮮やかに記してきた。

 人間の心のなかに確かに存在する不変の世界を、

「ポルカボン」と呼ぶ。

 

マトハヅレでは私たちが生きるこの実社会と、心に漂う空想の世界を装身具にあらわすという発足当時からの基本姿勢のもとものづくりをしています。

 地球にS極とN極があるように、マトハヅレを動かすふたつのエネルギー。

 この時空の異なるふたつの世界は、光と影、都市と星、現実と幻想という対のもと、作品群となってあらわされます。

 

 

 

 

 

デザイン・制作

鈴木真人

1980年 東京都生まれ

 

デザイン

鈴木由美子

1979年 広島県生まれ